電車の運転免許
電車を運転するために必要な免許のことを、一般に「電車の運転免許」と呼んでいます。正式には国家資格の「甲種電気車運転免許」のことを指します。免許は、動力車操縦者試験に合格した者に、地方運輸局長から交付されます。
「動力車操縦者運転免許に関する省令」には12種類の運転免許を定めていますが、電車の運転に必要なものは「甲種電気車運転免許」(電車と電気機関車)です。路面電車を運転するには「乙種電気車運転免許」が、新幹線では「新幹線電気車運転免許」が必要です。運転免許を取得するための教育は、国土交通省の委託を受けて各鉄道事業者が行います。
受験資格は20歳以上で、心身の障害がないことなどが必須条件です。試験には、身体・適性の検査、運転関係の法令・車両の構造・機能に関する筆記試験、運転の技能試験などがあります。
身体検査の合格基準は次のとおりです。①「視機能」 :視力(矯正視力を含む)が両眼で1.0以上、かつ、一眼でそれぞれ0.7以上であること。正常な両眼視機能を有すること。正常な視野を有すること。色覚が正常であること。②「聴力」 :両耳とも5m以上の距離でささやく言葉を明らかに聴取できること。③「疾病及び身体機能の障害の有無」 :心臓疾患、神経および精神の疾患、眼疾患、運動機能の障害、言語機能の障害その他の動力車の操縦に支障を及ぼすと認められる疾病または身体機能の障害がないこと。④「中毒」 :アルコール中毒、麻薬中毒その他動力車の操縦に支障を及ぼす中毒がないこと。
適性検査は、クレペリン検査、反応速度検査などで、技能試験は、速度観測、距離目測、ブレーキの操作、ブレーキ以外の機器の取り扱い、定時運転、非常の場合の措置など多彩です。
実際には鉄道事業者が養成所を設け、そこで必要な知識の習得と訓練を実施し、電車が故障した場合、地震が発生した場合などの異常時の対応も含めて幅広く身につけさせてから免許を申請します。運転士は常に多くの人命を預かり、安全な輸送に徹しなければならないという立場に置かれるからです。運転士になるためには、駅務と車掌の仕事を経験したあと、約9カ月の学科や技能の教習を受けてから免許を得るというシステムを設けている事業者もあります。
運転免許を受けた人が関係法令などに違反したり、心身の障害で運転ができなくなったり支障を及ぼすおそれが生じたりした場合、地方運輸局長は免許の取り消しまたは停止をすることができるという規定も置かれています。