閉そく方式

列車同士の正面衝突や追突を避けるため、線路を一定の区間に区切り、その区間を一本の列車だけに占有させるシステムのことを「閉そく方式」といいます。「閉そく」とは、文字どおり「閉じて塞(ふさ)ぐ」という意味で、閉そくされた一定の区間のことを「閉そく区間」と呼んでいます。閉そく区間では、複数の列車を同時に存在させることが禁じられているので、衝突や追突の心配もないわけです。『1閉そく区間1列車』の原則は、安全運行を確保するための最も基本的な原則と言えます。

一般的な閉そく区間は、地上信号機などの設備を伴うため固定されています。また、その間隔は、列車が運行される地域の条件などに応じて異なり、最も短いもので数十m、列車本数の少ない線区では数kmに及ぶ例もあります。

閉そく方式は大きくふたつに分類されます。ひとつは単線区間で用いられる「非自動閉そく方式」です。これは閉そく区間の両端にいる停車場係員が連絡を取り合い、手動で信号などを取り扱って列車の進行を管理するものです。かつては、閉そく区間ごとに刻印された「タブレット」という通行証を用意し、運転士は決められたタブレットを携帯しないと閉そく区間内に進入できない方式も見られました。

もうひとつは、複線と単線の両方に用いられている「自動閉そく方式」です。今日ではこの方式が一般的です。これは閉そく区域内に列車がいるか、いないかを信号機が自動的に検知し、進行信号や停止信号を現示する方式です。さらに、信号の現示に連動させ、自動的に列車を停止させたり減速させたりする装置(自動列車停止装置:ATS)や、自動列車制御装置(ATC)を用いることで、衝突・追突事故の撲滅を期しています。

駅間の閉そく区間に設置された信号を「閉そく信号機」といいます。閉そく区間に列車がいないときは自動的に進行信号を指示し、列車がいるときは自動的に注意信号や停止信号を指示します。単線区間では対向列車は厳禁されるので、反対方向の閉そく信号機はすべて停止信号が現示されることになります。先行する列車が2区間以上離れている場合は信号機が青(進行)、1区間のときは黄(注意)、次の区間に列車があるときは赤(停止)を示す「三灯式」が基本で、大都市圏の路線では緑(進行)→緑・黄(減速)→黄(注意)→黄・黄(警戒)→赤(停止)と変化する「五灯式」が多く用いられています。また、列車の有無はレールを流れる信号電流によって検知します。

なお、以上に述べた閉そく方式は、いずれも閉そくの境界が決められている「固定閉そく方式」ですが、今日では、先行する列車の動きに合わせ、後続列車が、"進むことのできる範囲"を連続的に変化させる「移動閉そく方式」も登場しています。この方式は、高度な無線システムを用いて列車の位置を検知し、自動的に運転制御を行う仕組みです。閉そく信号機などの固定設備が不要となるだけでなく、より高密度な列車運行も可能になることから、安全性と経済性の両面から注目されています。 (→信号ATSATO

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